業務フロー×仕訳公開 2026-10-31・更新 2026-10-31

財務会計と管理会計の違い:配賦の計算とデータの持ち方

会議室の机で資料を分け合う複数の手元

確認日 2026-10-31(調べ方)・制度は変わることがあります。個別の判断は公式の資料と専門家に確かめてください。

財務会計は株主や金融機関など社外に報告する会計で、会計基準に沿って作ります。管理会計は社内の判断に使う会計で、形式は会社が決めます。配賦は、複数の部門にまたがる共通費を、基準を決めて割り振る計算です。配賦をしても全社の費用の合計は変わりませんが、部門別の利益の見え方が変わります。システムでは、配賦の基準と計算結果を履歴つきで残すことが要点です。

財務会計と管理会計の違い

一言で分けるなら、見る人と目的が違います。

観点 財務会計 管理会計
主な読者 株主、金融機関、税務署など社外 経営者、部門長など社内
目的 成績と財政状態を報告する 判断と改善に使う
ルール 会計基準や法令に従う 会社が決める
区切り 会計年度、四半期や月次 月次、週次、案件ごとなど
単位 会社全体、企業グループ 部門、製品、顧客、案件
金額の精度 基準に沿って確定させる 速さや見積を優先することもある
配賦 製造原価の計算などで使う 部門別損益などで自由に設計する

データの元は同じです。発生した取引が業務フローを通って仕訳になり、そこから財務諸表も部門別損益も作ります。管理会計用の数字を別のシステムで打ち直すと、元の仕訳と合わなくなる原因になります。

配賦は管理会計だけの話ではありません。製造業の原価計算では、工場の間接費を製品に割り振る計算が売上原価と在庫の金額に影響します。そのため財務会計の数字にも関わります。原価計算基準は、補助部門費を直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦法などで製造部門に配賦するとしています(第二章第三節 一八)。

配賦の基本:部門を2つに分ける

配賦の説明では、部門を2種類に分けます。利益を生む事業部と、事業部を支える補助部門です。原価計算の言葉では製造部門と補助部門ですが、IT企業なら事業部と本社部門に読み替えられます。

ここでは次の例を使います。

部門 費用 配賦基準 事業部A 事業部B 総務 情シス
総務 600,000 人数 50人 30人 - 20人
情シス 400,000 端末台数 60台 20台 20台 -

合計100万円を事業部AとBに割り振ります。難しいのは、総務が情シスの人の面倒を見て、情シスが総務の端末を管理している点です。補助部門の間のやり取りをどう扱うかで、3つの方法に分かれます。

3つの配賦方法の計算

直接配賦法は、補助部門の間のやり取りを無視します。総務は50対30、情シスは60対20で事業部へ配ります。

階梯式配賦法は、順番を決めて上から下へ配ります。先に配った部門へは戻しません。ここでは総務を先にします。総務60万円を50対30対20で配り、情シスへ12万円が行きます。情シスは合計52万円を、事業部へ60対20で配ります。

相互配賦法は、補助部門の間のやり取りも計算に入れます。ここでは連立方程式で解きます。配賦後の費用を総務 S、情シス I とすると、次の式です。

  • S = 600,000 + 0.2 × I
  • I = 400,000 + 0.2 × S

解くと S は約708,333円、I は約541,667円です。事業部には、S と I にそれぞれの比率(Aは0.5と0.6、Bは0.3と0.2)を掛けて配ります。

方法 事業部A 事業部B 計算の負担
直接配賦法 675,000 325,000 軽い
階梯式配賦法 690,000 310,000 順番を決める必要がある
相互配賦法 679,167 320,833 連立方程式または繰り返し計算

どの方法でも合計は100万円です。部門の負担額が変わるだけで、全社の費用は変わりません。

実装の目線では、階梯式は順番のマスタ、相互配賦法は行列の計算が必要です。補助部門の数が増えると連立方程式の数も増えます。繰り返し計算で近づける方法もありますが、終了の条件と端数の処理を決めておきます。

端数の処理と合計の検算

比率で割ると端数が出ます。配賦の鉄則は、配る前の金額と配った後の合計を一致させることです。編集部の設計の例は次のとおりです。

  • 各配賦先の金額を計算して切り捨てる
  • 足りない分を、最大の配賦先に足すか、端数の大きい順に1円ずつ足す
  • 実行後に「配賦元の合計=配賦先の合計」を確認し、違えば仕訳を作らない

SQLで率を掛けただけの結果は、合計が合わないことがあります。金額の検算を処理の一部に入れておくと、月次のたびに手で調べる必要がなくなります。

配賦のデータ設計

配賦は月次で繰り返す計算なので、基準の値、ルール、実行結果を分けて持ちます。基準の値が変わっても、過去の月の結果を再現できるようにします。

配賦のテーブルの例

allocation_rules

  • id PK
  • from_dept
  • driver
  • method
  • valid_from
  • valid_to

driver_values

  • driver
  • dept_id
  • period
  • value

allocation_runs

  • id PK
  • period
  • run_at
  • status
  • reversed_by

allocation_lines

  • run_id FK
  • rule_id FK
  • to_dept
  • amount
  • journal_id
  • allocation_runs 1 — N allocation_lines
  • allocation_rules 1 — N allocation_lines
実行ごとに1行作ります。やり直すときは前回の実行を取り消し、新しい実行を作ります。

配賦の結果を部門別損益に反映する方法は2つあります。一つは管理会計用の仕訳として残す方法で、もう一つは分析用の別の表だけに持つ方法です。下は、総務費を直接配賦法で振り替える仕訳の形にした例です。

配賦の結果を部門へ振り替える

総務費の配賦(月次)
借方金額貸方金額
配賦費用(事業部A)375,000配賦額(総務)600,000
配賦費用(事業部B)225,000
allocation_lines
run_idfrom_deptto_deptdriveramount
42総務事業部A人数375,000
42総務事業部B人数225,000
全社の費用は変わらず、部門の間で動くだけです。科目名は設計の例です。

財務会計の帳簿に混ぜない場合は、帳簿の区分を持つか、配賦の仕訳を別の元帳に置きます。どちらにするかは、財務の数字と管理の数字の照合のしやすさで選びます。締めた月にやり直すときの扱いは、締め処理と同じルールで考えます。

部門別・プロジェクト別損益のデータ

配賦の前に、仕訳に部門やプロジェクトのコードが付いているかが出発点です。

仕訳明細に分析の軸を付ける

外注費の計上
借方金額貸方金額
外注費300,000買掛金500,000
外注費200,000
journal_lines
idaccountsideamountdept_idproject_id
1外注費dr300,00010P-1
2外注費dr200,00010P-2
3買掛金cr500,000NULLNULL
1つの費用を2つのプロジェクトに分ける例です。列を足すことで集計の単位が増えます。

プロジェクト別の損益では、人件費が最も大きな項目になりがちです。給与そのものを案件に紐づけるのではなく、工数×単価で計算するのが設計の例です。単価には実績を使う方法と、年初に決めた標準単価を使う方法があります。標準単価なら月次の計算が安定しますが、実績との差額が残ります。差額は案件に配るか、部門に残すかを決めておきます。

段階 含めるもの 使いどころ
粗利 売上から外注費と直接の人件費を引く 案件の採算の判断
貢献利益 粗利から部門の固定費を引く 部門の評価
配賦後の利益 さらに本社費を配る 長期で費用を回収できる価格かの確認

配賦後の利益で赤字に見えても、案件をやめれば本社費が消えるわけではありません。管理できない費用を混ぜると、判断を誤る原因にもなります。レポートは段階を分けて見せるのがよいと編集部は考えます。

よくある質問

配賦と按分の違いは何ですか?
どちらも金額を割り振ることで、実務では近い意味で使われます。配賦は共通の費用を部門や製品に割り振るときによく使われ、按分は期間や比率で分ける場面全般に使われます。
配賦基準は何を選べばよいですか?
費用の発生と関係の強いものを選びます。総務費なら人数、情報システム費なら端末数や利用量などが例です。測定が簡単で、部門が納得できることも大切です。
配賦すると会社全体の利益は変わりますか?
社内の部門の間で割り振るだけなら、全社の費用の合計は変わりません。部門別の利益の見え方が変わります。
プロジェクト別の損益には何のデータが必要ですか?
売上と外注費にプロジェクトのコードを付けること、工数の記録、人件費の単価が基本です。共通費を含めるかどうかは目的によって決めます。

出典

調べ方・間違いのお知らせ