電子帳簿保存法のシステム要件:訂正削除履歴、検索、タイムスタンプ

確認日 2026-10-31(調べ方)・制度は変わることがあります。個別の判断は公式の資料と専門家に確かめてください。

電子帳簿保存法のシステム要件は、3つの制度で別々に決まっています。帳簿の電子保存、スキャナ保存、電子取引データの保存です。このうち法人と個人事業者が対応を求められるのは電子取引データの保存で、ほかの2つは希望者が使う制度です。

設計で迷いやすいのは、訂正削除履歴がいつ必須になるかです。答えは「優良な電子帳簿を選ぶとき」です。電子取引では、4つの改ざん防止措置のうちの1つとして登場します。

3つの制度と要件の地図

区分 対応 対象の例 主な要件
電子帳簿等保存 希望者 自社がシステムで作る帳簿・書類 システム概要書等の備付け、画面・書面への出力、ダウンロードの求めへの対応
優良な電子帳簿 希望者(届出) 仕訳帳、総勘定元帳、一定の補助簿 訂正削除履歴、帳簿間の相互関連性、検索機能
スキャナ保存 希望者 受領した紙の請求書など タイムスタンプ等、検索、入力期間
電子取引データ保存 対応が必要 メールや EDI、クラウドで授受した請求書 改ざん防止の措置、検索、画面表示

優良な電子帳簿は、あらかじめ届出を出せば、過少申告加算税が5%軽減される制度の対象になります。令和7年度の税制改正では、請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿にも自動で連携する仕組みを対象にした制度も新設されました。国税庁はこれをデジタルシームレス保存と呼んでいます。

訂正削除履歴:反対仕訳と履歴テーブル

優良な電子帳簿では、訂正や削除の事実と内容を確認できるシステムが求められます。取扱通達と一問一答によると、大きく2つの方法があります。記録を直接訂正できるなら履歴を残す方法と、直接訂正できないようにして反対仕訳で直す方法です。

反対仕訳の方法では、元の仕訳を特定できる情報が付いていることが必要です。一問一答は、貸借の科目はそのままで金額をマイナス入力する方法も反対仕訳の一類型としています。

反対仕訳で訂正する:元の行を残し、参照を持たせる

取消の仕訳
借方金額貸方金額
売上100,000売掛金110,000
仮受消費税10,000

元の売上計上を打ち消す

journal_entries
identry_dateamountreversal_ofcreated_at
1,0012026-10-31110,000NULL2026-11-01
1,1022026-11-10-110,0001,0012026-11-10

元の行は UPDATE しない

reversal_of が当初の仕訳を特定する情報です。設計の詳細は赤伝の記事で扱っています。

直接訂正できるシステムでは、原則として訂正削除の履歴をすべて残します。例外もあります。入力誤りを直す期間を内部規程で定め、その期間が入力日から1週間を超えない場合は、その期間の履歴を残さないシステムも認められます。

通常の業務処理期間を過ぎた追加入力についても、その事実を確認できる必要があります。一問一答によると、通常の期間とは日次・週次・月次のサイクルのことで、最長2か月までが通常の期間として扱われます。テーブルでは、取引日と別に入力日を持つのが基本です。設計の例を示します。

履歴を残す場合の持ち方(設計の例)

journal_entries

  • id PK
  • entry_date
  • created_at
  • reversal_of FK
  • status

journal_lines

  • id PK
  • entry_id FK
  • account_code
  • amount
  • partner_id

journal_entry_history

  • id PK
  • entry_id FK
  • changed_at
  • changed_by
  • before_json
  • after_json

link_keys

  • entry_id FK
  • subledger_no
  • source_system
  • journal_entries 1 — N journal_lines
  • journal_entries 1 — N journal_entry_history
  • journal_entries 1 — 1 link_keys
link_keys は補助簿との関連を確認するための例。帳簿間の相互関連性を、伝票番号などでたどれるようにします。

赤伝の作り方は赤伝と赤黒処理の記事、過去の期間の扱いは月次締めの記事を参考にしてください。

検索要件:3項目と緩和

検索の項目は、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先の3つです。さらに次の2つの機能が加わります。

  • 日付または金額の範囲を指定できる
  • 2つ以上の項目を組み合わせて条件を設定できる

組合せは「A かつ B」でよく、一問一答によると「A または B」は求められていません。1項目で検索した結果を別の項目で絞り込む方式でも要件を満たします。

税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合、範囲指定と組合せの機能は不要になります。一問一答によると、これは優良な電子帳簿の検索要件でも同じです。電子取引では、売上高が5,000万円以下の事業者などで検索機能が不要になる場合があり、要件が会社の規模で変わります。

実装では、partner_id だけでなく取引先名を検索できることや、金額と日付にインデックスを持たせることが基本です。電子取引の請求書をファイルで保存する場合は、一問一答はファイル名に日付・取引先・金額を入れる方法も示しています。

タイムスタンプが要るとき、要らないとき

電子取引では、次のいずれかの措置を取ります。

  1. タイムスタンプが付いたデータを受領する
  2. 速やかにタイムスタンプを付ける(おおむね7営業日が基本で、規程を定めれば業務サイクル後の付与も可)
  3. 訂正削除の記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムで授受・保存する
  4. 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する

つまりタイムスタンプがなくても要件は満たせます。一問一答は、利用者が訂正削除できない、または履歴が全部残るクラウドサービスなら、通常は3の要件を満たすと考えられると説明しています。

スキャナ保存は少し異なります。受領から最長で2か月とおおむね7営業日以内に入力する必要があり、タイムスタンプの代わりに訂正削除の履歴が残るシステムを使えます。ただし保存日時を客観的に証明できる必要があります。一問一答は、時刻証明の機能を他社向けのサービスとして提供している企業を除き、自社システムではこの代替要件を満たせないと考えられるとしています。

連携で見落としやすい2つの点

システムの結合で特に注意が必要な点を挙げます。

集計連携のデータ:業務システムの集計だけを会計に送っている場合、会計側のデータだけでは「全ての取引」を記録した帳簿になりません。一問一答は、原則として業務システムの個別データも合わせて保存する必要があるとしています。優良な電子帳簿では、集計データだけだと履歴と相互関連性も満たせません。

マスタの履歴:単価などのマスタは期中に変わります。一問一答は、取引記録に関連するマスタをすべて保存する必要があるとしています。期末時点のマスタだけでは過去の取引を正しく表示できないためです。

連携で残すべきデータ(設計の例)

  1. 1

    個別取引の記録販売管理

    仕訳なし

    明細と入力日を保存

  2. 2

    マスタの世代管理販売管理

    仕訳なし

    有効期間つき

  3. 3

    集計して連携仕訳 IF

    売掛金 / 売上

    連携番号を付ける

  4. 4

    会計で記帳会計

    売掛金 / 売上

    集計元へたどれる

  5. 5

    保存期間まで保持アーカイブ

    仕訳なし

    検索と出力を維持

システムを入れ替えるときは、旧システムのデータの見読性と検索も引き継ぎます。

保存期間は各税法の定めによります。法人の帳簿書類は原則7年で、欠損金が生じた事業年度は10年です。仕訳連携の単位については仕訳連携の記事を参考にしてください。

法制度の地図:ほかの制度との関係

業務システムに関わる制度は、目的が異なるので要件も重なったり離れたりします。

制度 目的 システムへの主な影響 詳しい記事
電子帳簿保存法 帳簿書類の電子保存と適正な課税 履歴、検索、改ざん防止、保存 このページ
インボイス制度 消費税の仕入税額控除 登録番号、税率別の税額、返還、経過措置 返還インボイス
J-SOX 財務報告の信頼性 変更管理、権限、職務分掌、証跡 ITGC と ITAC
新リース会計基準 リースの資産・負債の計上 契約台帳、償却と利息の計算 システム影響

電子帳簿の履歴と J-SOX の変更管理は、どちらも「あとから説明できること」を求めますが、根拠も確認する人も別です。訂正の仕組みを1つに揃えると、両方の説明に使えます。

なお一問一答には、令和8年12月31日までと以後で施行規則の項番号が変わる箇所があります。要件書に条文番号を書くときは時点を確認してください。

個別の適用は保存の方法や規模で変わります。判断に迷う場合は、税理士や所轄の税務署、独自開発のシステムなら、国税庁が案内する要件適合性の事前相談窓口を使えます。

法制度と内部統制の図解記事

よくある質問

訂正削除履歴はすべての会計システムに必須ですか?
いいえ。電子帳簿等保存で訂正削除履歴が要件になるのは「優良な電子帳簿」です。電子取引データの保存では、訂正削除の履歴が残るシステムの利用は改ざん防止の選択肢のひとつです。
電子取引の保存にタイムスタンプは必須ですか?
必須ではありません。タイムスタンプのほか、訂正削除の記録が残るシステムや訂正削除ができないシステムの利用、事務処理規程の運用のいずれかの措置で足ります。
検索要件の3項目は何ですか?
取引年月日その他の日付、取引金額、取引先です。日付や金額の範囲指定と、2つ以上の項目の組合せも要件ですが、税務職員のダウンロードの求めに応じられる場合は不要になります。
業務システムのデータも保存が必要ですか?
会計システムに集計データだけが入っている場合、仕訳帳や総勘定元帳を電子保存するなら、原則として個別取引を持つ業務システムのデータも合わせて保存します。
保存期間は何年ですか?
電子帳簿保存法の特例でも、保存期間は各税法の定めによります。法人の帳簿書類は原則7年で、欠損金が生じた事業年度は10年です。

出典

調べ方・間違いのお知らせ