返還インボイスとシステム改修:値引き・返品の仕訳と、控除70%時代のデータ
確認日 2026-10-31(調べ方)・制度は変わることがあります。個別の判断は公式の資料と専門家に確かめてください。
返還インボイスは、返品や値引きで売上を減らしたときに売手が交付する書類です。正式には適格返還請求書といいます。売上側のシステムでは、元の請求とのつながりと税率ごとの返還額を持てることが改修の中心になります。
買手側では、令和8年10月1日から免税事業者等からの仕入れの控除割合が80%から70%に下がりました。資料によっては「次は50%」のままの古い説明が残っているので、注意が必要です。
適格請求書と返還インボイスの項目を比べる
Q&A によると、適格請求書には6つの事項が必要です。適格返還請求書には5つの事項が必要で、顔ぶれが少し違います。
| 項目 | 適格請求書 | 適格返還請求書 |
|---|---|---|
| 発行者の名称と登録番号 | 必要 | 必要 |
| 取引の年月日 | 譲渡等の年月日 | 返還等の年月日と、元の譲渡等の年月日 |
| 内容 | 資産・役務の内容(軽減対象はその旨) | 元の取引の内容(軽減対象はその旨) |
| 金額 | 税率ごとの合計額と適用税率 | 返還等の税率ごとの合計額 |
| 消費税額等 | 税率ごとの消費税額等 | 返還等の消費税額等または適用税率 |
| 受領者の名称 | 必要 | 不要 |
元の取引の年月日は、適格請求書を交付した売上であれば、課税期間の中で期間をまとめて書く形でもかまいません。月単位の「○月分」のような書き方も認められます。毎日返品がある業態では、前月末日や最終販売日を合理的な方法として継続して使うこともできます。
返品の仕訳とテーブル
元の売上を伝票番号で指せる形にしておくと、記載事項を埋めやすくなります。
税込33,000円の返品:仕訳とレコード
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 30,000 | 売掛金 | 33,000 |
| 仮受消費税 | 3,000 |
売上の取消として処理する例
credit_notes| id | invoice_id | tax_rate | amount_excl | tax | issued_on |
|---|---|---|---|---|---|
| 71 | 1,205 | 10% | 30,000 | 3,000 | 2026-11-05 |
invoice_id が元の請求
会計上の勘定は、売上を直接減らす方法のほか、売上戻り高などの勘定を使う会社もあります。設計の例として、次のようなテーブルが考えられます。
請求と返還の関係(設計の例)
invoices
- id PK
- customer_id FK
- registration_no
- period_from
- period_to
- issued_on
invoice_tax_summaries
- invoice_id FK
- tax_rate
- taxable_amount
- tax_amount
credit_notes
- id PK
- invoice_id FK
- reason
- issued_on
- is_exempt
credit_note_lines
- id PK
- credit_note_id FK
- tax_rate
- amount
- tax_amount
- item_desc
- invoices 1 — N invoice_tax_summaries
- invoices 1 — N credit_notes
- credit_notes 1 — N credit_note_lines
インボイスの税額は、1請求書の税率ごとに1回端数処理します。明細の積み上げとのずれは消費税の端数処理の記事で扱っています。
1万円未満の判定単位
税込1万円未満の対価の返還等は、返還インボイスの交付義務が免除されます。システムで間違えやすいのは判定の単位です。
Q&A は、返還した金額や値引きの対象となる請求・債権の単位ごとの減額で判定すると説明しています。標準税率と軽減税率が混ざっていても、税率ごとに分けて判定はしません。
- 50万円の請求に対し、振込手数料相当の440円を減額:1万円未満で免除
- 40万円の請求に関し、1商品100円のリベートを合計2万円支払う:1商品ごとでなく減額の総額で見るため免除されない
明細1行ごとに amount < 10000 と判定すると、リベートの例で誤ります。集計は請求単位で行います。
振込手数料については、買手が差し引いた額を売手がどう処理するかで扱いが分かれます。入金時の差額の処理は入金消込の記事も参照してください。
修正インボイスと返還インボイスを分ける
請求の誤りを直す場合と、取引のあとで値引きや返品が起きた場合は別の話です。
交付したインボイスの記載事項に誤りがあれば、売手は修正したインボイスを交付しなければなりません。Q&A は2つの方法を示しています。
- 誤りを直して、すべての記載事項を改めて書いて交付する
- 当初のインボイスとの関連を明らかにして、修正した事項を明示して交付する
どちらの場合も、売手は当初分と修正分の両方の写しを保存します。買手が修正した仕入明細書を作り、売手の確認を受ける方法も認められています。その場合、売手は改めて交付しなくてもかまいません。
翌月の請求書で前月分を加減算して調整している場合は注意が必要です。Q&A は、この調整の中に対価の返還等にあたるものも含まれるとみています。その部分は返還インボイスの事項を記載する必要がありますが、同じ書類にまとめられます。
請求の変更が起きたときの分岐(設計の例)
- 1
変更の発生販売管理
仕訳なし
- 2
請求の記載誤りか判定販売管理
仕訳なし
誤りなら修正インボイスを発行
- 3
値引き・返品の登録販売管理
売上・仮受消費税 / 売掛金
対価の返還等
- 4
1万円未満の判定請求
仕訳なし
請求単位の合計で見る
- 5
返還インボイスの発行請求
仕訳なし
当月の請求書と1枚でも可
請求の取消を内部でどう記録するかは赤伝と赤黒処理の記事が参考になります。
1枚にまとめる方法と端数処理
当月の請求書に前月分の値引きを載せる場合、適格請求書と適格返還請求書のそれぞれの事項を書けば1枚で交付できます。
もう1つの方法もあります。継続して、売上から返還額を差し引いた金額と、その金額で計算した消費税額等を税率ごとに書く方法です。この場合の端数処理は税率ごとに1回となります。
システムでは、2つの方法で税額の計算式が変わります。差引方式は差引後の金額に税率を掛け、併記方式は売上と返還を別々に計算します。計算方式をテナントや取引先の設定にするなら、切り替えの時点も履歴に残します。継続適用が条件の方法だからです。
出精値引きは時期で分かれます。すでに行った取引の値引きなら対価の返還等で、これから行う取引なら対価から直接減額します。前後の区別が難しい場合はどちらでもよいと Q&A は説明しています。直接減額で標準・軽減が混ざるときは、値引額を価額の比率であん分して税率ごとに分けます。
買手側の経過措置:令和8年10月から70%
令和8年度税制改正で、免税事業者等からの仕入れの経過措置が変わりました。改正前は令和8年10月から3年間50%、その後は控除なしの予定でした。
| 課税仕入れの時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% |
| 令和13年10月1日以後 | 控除不可 |
1者からの仕入れの上限も下がります。令和8年10月1日以後に開始する課税期間では、1者あたり年間の課税仕入れが税込1億円を超えると、超えた部分は経過措置の対象になりません。令和6年10月1日から令和8年9月30日までに開始する課税期間は10億円です。適用が「取引日」ではなく「課税期間の開始日」で切り替わる点に注意が必要です。
税込110,000円の仕入れで見てみます。税抜経理の場合、控除できない分は原価に含める処理が一般的です。
免税事業者からの税込110,000円の仕入れ(標準税率・70%の時期)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 103,000 | 買掛金 | 110,000 |
| 仮払消費税 | 7,000 |
purchase_tax_rules| valid_from | valid_to | deduct_rate |
|---|---|---|
| 2023-10-01 | 2026-09-30 | 80 |
| 2026-10-01 | 2028-09-30 | 70 |
| 2028-10-01 | 2030-09-30 | 50 |
| 2030-10-01 | 2031-09-30 | 30 |
valid_from で引く
実装で気をつける点は3つあります。
- 判定日:Q&A は課税仕入れの時期で判断するとしています。役務は全部の完了日、商品は引渡しの日が原則です。9月21日から10月20日までの役務で10月20日に完了したものは70%です。同じ期間でも商品の仕入れなら、9月30日までは80%、10月1日からは70%に分かれます。支払日でも請求書の日付でもありません
- 帳簿の表示:経過措置の適用を受ける旨の記載が必要です。Q&A の例にある「80%控除対象」のように割合を固定文字で持っていると、変更のたびに直すことになります。割合を入れない文言や記号と凡例の方法も認められています
- 短期前払費用:支払日の課税期間で処理している年間保守料などは、Q&A の例では支払時の80%のままです。役務の期間で機械的に分けるとずれることがあります
登録事業者から登録番号のない請求書を受け取ることもあります。Q&A は、区分記載請求書等の事項を満たす書類があれば、そうした請求書も含めて一律に経過措置を適用できると説明しています。
保存と税率変更への備え
売手は交付したインボイスの写しを保存します。保存期間は、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。電子で発行した請求書データは、変更のおそれがなく合理的な方法で編集された状態であれば、データベースでの保存も認められます。電子帳簿保存法の一問一答は、税務調査の際に実際の形式で出力して確認することがあるとしています。電子帳簿保存法のハブもあわせて確認してください。
税率と控除割合のどちらも「期間つきのマスタ」で持ち、判定日を明細の単位で持っておけば、同じ形の改修で対応しやすくなります。編集部としては、割合や税率をコードに書かない点を、今回の改修で最初に確かめることを勧めます。
よくある質問
- 返還インボイスとは何ですか?
- 適格返還請求書の通称です。インボイス発行事業者が、課税事業者に返品や値引きなどの対価の返還等を行うときに交付する書類で、消費税法に記載事項が定められています。
- 振込手数料を差し引かれたときも返還インボイスが必要ですか?
- 売手が売上値引きとして処理する場合は対価の返還等にあたります。ただし税込1万円未満なら交付義務は免除されるため、一般的な振込手数料の額であれば交付は不要です。
- 1万円未満かどうかは税率ごとに判定しますか?
- いいえ。標準税率と軽減税率が混ざっていても税率ごとには分けず、返還した金額や値引きの対象となる請求・債権の単位で判定します。
- インボイスの経過措置は今何パーセントですか?
- 令和8年10月1日から令和10年9月30日までの課税仕入れは70%です。その後は50%、30%と下がり、令和13年10月1日以後は控除できなくなります。
- 請求書と返還インボイスを1枚にまとめられますか?
- できます。それぞれの記載事項を満たせば1枚で交付できます。継続して差引後の金額と税額を税率ごとに記載する方法もあり、その場合の端数処理は税率ごとに1回です。
出典