法制度・統制公開 2026-10-31・更新 2026-10-31

新リース会計基準でシステムの何が変わるか:仕訳とテーブルで見る影響

複合機が並ぶオフィスの一角

確認日 2026-10-31(調べ方)・制度は変わることがあります。個別の判断は公式の資料と専門家に確かめてください。

新リース会計基準は、借手のほぼすべてのリースを貸借対照表に載せるルールです。オペレーティング・リースの賃借料も、原則として使用権資産とリース負債に変わります。

システムにとっての変化は、支払いの記録だけで済んでいた契約に、償却と利息の計算が必要になることです。適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度からで、早期適用もできます。

適用時期と対象

項目 内容
公表 2024年9月13日
一部改正 2026年10月16日(金融商品に関する基準の改正に伴うもの)
適用 2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から
早期適用 2025年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から可
3月決算の最初の年度 2027年4月1日に始まり2028年3月に終わる年度
12月決算の最初の年度 2028年1月1日に始まり2028年12月に終わる年度

この基準の適用により、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」と適用指針第16号は終了します。2026年の改正分の適用時期は、同月に改正された金融商品の基準と同じです。

中小企業については、ASBJ は「中小企業の会計に関する指針」などが用いられると説明しています。一方で企業会計基準の適用も妨げられないので、親会社や会計監査の状況を含めて経理と確認します。

何が変わるのか:オペレーティング・リースの仕訳

旧基準でオペレーティング・リースだった契約は、支払いの都度の費用でした。新基準では、借手はリース開始日にリース負債を現在価値で計上し、それをもとに使用権資産を計上します。

例として、月額10万円・5年・月末払い・割引率年3%のリースを考えます。リース料の総額は600万円で、現在価値は約557万円です。

リース開始日:支払いはないが計上が起きる

開始日の仕訳
借方金額貸方金額
使用権資産5,565,236リース負債5,565,236
lease_contracts
idasset_typestart_dateterm_monthsmonthlyrate
301copier2027-04-0160100,0003.00%

台帳が計算の起点

金額は例です。付随費用や前払いがあれば使用権資産に足します。

利息は、基準が原則としている利息法で配分します。残高に利率を掛けるので、利息は月を追うごとに減ります。

1か月目:支払いが元本と利息に分かれる

月末の仕訳
借方金額貸方金額
リース負債86,087現金預金100,000
支払利息13,913
減価償却費92,754使用権資産92,754
lease_schedules
seqopeninginterestprincipalclosing
15,565,23613,91386,0875,479,149
25,479,14913,69886,3025,392,847
35,392,84713,48286,5185,306,329

端数は四捨五入の例

月次の計算結果をスケジュールに持ちます。償却は定額法の例で、5,565,236÷60≒92,754円です。

所有権が移転しないリースの使用権資産は、原則として借手のリース期間を耐用年数、残存価額ゼロで償却します。償却方法は定額法等から実態に応じて選びます。

旧基準の賃借料は毎月10万円で一定でした。新基準では利息が初めのうちほど大きいため、この例の1か月目の費用は約10.7万円です。予算と実績の比較、部門別の配賦、管理会計のレポートに影響します。配賦の考え方は財務会計と管理会計の記事を参考にしてください。

そもそもリースか:識別の判断

基準はリースを、資産を使う権利を一定期間、対価と交換に移転する契約やその一部としています。名前が「賃貸借」や「サービス」でも、中身がこれに当たれば対象です。

適用指針の判断は2段階です。

  • 資産が特定されているか。提供者が実質的に別の資産へ代替できる権利を持つなら、特定されていない
  • 顧客が使用を支配しているか。経済的利益のほとんどすべてを受け取り、使い方を指図する権利を持っているか

IT の契約では、適用指針の設例5が参考になります。提供者がサーバーを設置してネットワーク・サービスを提供し、顧客はサービス水準を決めるだけの例は、リースを含まないと判断しています。顧客が自社の敷地のサーバーの使い方や保管するデータを決める例は、リースを含むと判断しています。

サーバーの例は単純化されています。データセンターの専有ラックや保守込みの機器などは、契約内容で結論が変わるので経理の判断が必要です。無形固定資産のリースには基準を適用しないことができる点も、ソフトウェアの契約を整理するときに関係します。自社利用ソフトの扱いはソフトウェアの資産計上の記事で扱っています。

増えるデータ:契約台帳の設計

支払い管理だけの台帳に足りないのは、計算の前提と判断の記録です。設計の例を示します。

リース管理のテーブル(設計の例)

lease_contracts

  • id PK
  • vendor_id FK
  • contract_no
  • asset_type
  • start_date

lease_terms

  • id PK
  • contract_id FK
  • effective_from
  • term_months
  • discount_rate
  • monthly_lease
  • non_lease_part
  • term_reason

lease_schedules

  • id PK
  • term_id FK
  • seq
  • interest
  • principal
  • closing

rou_assets

  • id PK
  • term_id FK
  • cost
  • dep_method
  • accumulated_dep
  • lease_contracts 1 — N lease_terms
  • lease_terms 1 — N lease_schedules
  • lease_terms 1 — 1 rou_assets
条件の変更ごとに lease_terms を追加し、古いスケジュールを上書きしない形にします。
基準の項目 基準の内容 データの例
借手のリース期間 解約不能期間に、行使が合理的に確実な延長オプションの期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの期間を加える 期間、判断の理由、判断日
割引率 貸手の計算利子率。知り得なければ追加借入利子率 率、出所、適用日
借手のリース料 固定、指数連動の変動分、残価保証、購入オプションなど 種類ごとの金額
非リース部分 原則区分。借手は分けない選択も可 区分額、選択のグループ
見直し 条件変更や重要な事象でリース負債を見直す 変更日、変更理由、再計算の履歴
表示 リース負債は1年内と1年超に分ける 期末の流動・固定の区分

特に手間になりやすいのが借手のリース期間です。不動産の賃貸借のように自動更新がある契約は、更新の見込みで期間が変わります。適用指針の設例は、普通借家契約の延長オプションの判断を複数示しています。計算結果よりもなぜその期間にしたかを残す欄が重要で、これは監査でも説明の根拠になります。

基準は、リースの契約条件の変更や、延長オプションの行使などの場面でリース負債の見直しを求めています。計算をやり直す前提で、履歴を持つ設計にします。見直しの過去月への影響は月次締めの記事の考え方が使えます。

支払データの成り立ちは購買から支払までの流れの記事で確かめられます。

短期・少額の簡便処理

すべての契約を計上しなくてよいように、適用指針は簡便的な取扱いを定めています。

  • 短期リース:リース開始日に借手のリース期間が12か月以内で、購入オプションがないもの
  • 少額リース:次のいずれかを満たすもの
    • 減価償却資産を購入時に費用処理する基準額以下
    • 事業内容に照らして重要性が乏しく、契約1件あたりの金額の重要性も乏しいもの
    • 新品時の原資産の価値が少額のもの

適用指針の結論の背景によると、契約1件の判定は旧基準の300万円以下の判定を踏襲する目的で入れられたものです。新品時の価値は、IFRS 第16号で5千米ドル以下程度を念頭に置いた考え方に対応しています。後の2つのどちらを使うかは選択で、選んだ方法は首尾一貫して使います。

システムには、判定の結果と根拠を持たせます。短期リースは資産のグループごとに適用を選びます。リース期間の見直しで12か月を超えると、扱いが変わる可能性があります。適用指針はこの場合の処理も定めています。

導入の進め方と経過措置

適用初年度の処理は2つの道があります。原則は過去の期間すべてに遡って適用する方法です。もう1つは、累積的影響額を初年度の期首の利益剰余金に反映し、その残高から新しい処理を始める方法です。

後者を選ぶ場合は、契約の種類で扱いが分かれます。

旧基準の分類 期首の処理 必要なデータ
ファイナンス・リース 前期末のリース資産・債務の帳簿価額を、使用権資産・リース負債の期首帳簿価額にできる 前期末の帳簿価額
オペレーティング・リース、新たに識別したリース 残りのリース料を期首時点の追加借入利子率で割り引いて負債にする 残りの支払予定、期首の利子率

オペレーティング側の使用権資産は、リース開始日から適用していたかのように計算した額を割り引く方法と、負債と同額(前払・未払の調整あり)にする方法を、1件ごとに選びます。前者は過去の契約情報が要るので、データ移行の量に直結します。

システム対応の順序の例

  1. 1

    契約の洗い出し各部門・支払データ

    仕訳なし

    リースを含むかの判定

  2. 2

    処理方針の決定経理

    仕訳なし

    簡便処理と経過措置の選択

  3. 3

    台帳と計算の用意リース管理

    仕訳なし

    パッケージか自社開発か

  4. 4

    期首残高の移行会計

    使用権資産 / リース負債

  5. 5

    月次の連携会計

    リース負債・支払利息 / 現金預金

    償却も別に計上

  6. 6

    開示資料の作成会計

    仕訳なし

    注記の情報を集計

連携の設計は仕訳の単位と再実行の方法から決めます。

会計への連携の単位は仕訳連携の記事を参考にしてください。注記については、基準が借手に会計方針、リース特有の取引、当期と翌期以降のリースの金額がわかる情報を求めています。使用権資産の増減やリース負債の残高を集計できるようにしておきます。

本記事は会計処理を中心に扱い、税務上の扱いは取り上げていません。計上と税務で差が出る場合の処理は、経理と税務の担当に確認してください。

編集部としては、計算エンジンの作り込みより先に、契約の一覧と判断の記録の形を決めることを勧めます。計算はパッケージでも代替できますが、契約の情報を集める作業は代替しにくいからです。

よくある質問

新リース会計基準はいつから適用されますか?
2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から適用されます。3月決算の会社なら2028年3月期が最初の年度です。2025年4月1日以後開始の年度からの早期適用も認められています。
中小企業にも新リース会計基準は適用されますか?
ASBJ は、中小企業では「中小企業の会計に関する指針」などが用いられると説明しています。ただし企業会計基準を使うこともできます。どれを使うかは会社の状況によります。
SaaSの利用料はリースになりますか?
契約ごとの判断です。無形固定資産のリースには基準を適用しないことができます。またサービス提供者が資産の使い方を決める契約は、リースを含まないと判断される場合があります。
短期リースと少額リースは資産計上しなくてよいですか?
簡便的な取扱いを選べます。短期リースは12か月以内で購入オプションのないものです。少額リースには、基準額以下、重要性の乏しいもの、新品時の価値が少額のものなどの区分があります。
新リース基準で旧基準の契約データはそのまま使えますか?
そのままでは足りないことが多いです。オペレーティング・リースとして扱っていた契約は、残りのリース料、適用初年度の期首時点の追加借入利子率などを新しく持つ必要があります。

出典

調べ方・間違いのお知らせ